『
朝日ぐんま 』 のコラム 「 そして いま 」 に私のことを掲載いただきました。
店名も個人名も書いていないので、わかる人にしかわからない内容です。
書いていただいた、私自身、初心を思い起こす心境です。
--------------------------------------------------------------------------
『笑顔』
このごろ涙もろい。とくに笑顔に弱い。つらいこと悲しいことが多すぎる。
笑顔にふれると忘れたものに出会ったような、懐かしさがこみあげる。
▽
県民ホールでのグッドデザインぐんま展。ここで、いい笑顔に出会った。
高崎市の和菓子屋さんの3代目(33)がそうだ。
今年いちばん気に入った餡(あん)ができた、ぜひ食べてもらいたい。
そういって彼は声をはずませた。
▽ 大学で経営学を専攻し、創業75年の店を引き継いだ。
開高健の「オーパ!」に魅せられ、紀行家を夢に描いたこともあった。
でも、何より和菓子が好きだった。
いろんな和菓子屋を見て歩いて、千葉・市川市の和菓子屋の主人を師匠と決めた。
▽
この仕事は生半可ではない、私は好きでやっている。その言葉に突き動かされた。
面識もツテもなかったが、頼み込んで弟子入りさせてもらった。92年の春だった。
3年間住みこみで修行。1年半たってからやっと菓子にさわれた。
▽
だからこそ、餡にさわれる喜びを知った。
その師匠は「こし餡は藤色の紫をめざせ」と教えてくれた。餡だけは誰にも負けたくない。その意地でがんばってきた。そして12年目の春、ようやく「最高の餡の色」をつかんだ。
▽薦められるままに桜餅を食べた。淡いピンク色の焼き皮と薄紫色の餡。
ほのかな色合いと甘さが春を告げる。ここまでよくがんばったなと思う。
そのとたん、こちらも笑顔がこぼれた。
(
前橋総局 白石 陽一)
--------------------------------------------------------------------------
|